忘却の裂け目

サイトの更新がパソコンを立ち上げないと全体を直さず、そうこうしているうちに何を書こうとしていたか、わたしは忘れ去ってしまう。

長いことひどい不眠症を抱えて、ラムネと見紛う量の睡眠薬を飲み下す毎日がじょじょに健忘をますます悪くしている気もして、周りは呆けと笑ってくれるけれど、だんだん忘却の不安を胸にしまい込み始めている。

いまだって、ほんとうは、詩の話題、小説の話、読んだ本や聴きに行った講義について、本をめぐる環境について、発表する場について、書くということについて、サイトに残すはずだった。

でも残るのは、忘却について。

忘れていくということ。

空洞、という響きは虚しさをよくあらわす言葉だと感じる。

琥珀色のみずたまりに身を投げると、有毒な成分にぴりりとした刺激があり、たぶん目をぎゅっとつむり、鼻腔を塞ぎ、口唇を隙間なく締め閉じても、毒性は皮膚から染み込んで、急激に白くふやける指先が裂けて妙に赤さが際立つそこは、なおぴりぴりと痛いだろう。

わたしが書くことには、何も意味がない。

筆圧強く書きつけるこの文字は、あなたからは見えないのね。


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